写真からの図面起こし(トレース)

前回までに等角投影法による斜視図をご紹介しました。
今回は、ご提供頂いた写真を、そのままトレースして図面を作成する例をご紹介します。
例えば、「ゴルフのティー&マーカーセット」の写真(二番目の画像)をご提供頂き、これを図面化したいとのご要望を頂いた場合、illustratorの一つのレイヤーに写真を映し出し、その上からなぞるようにして線を描いていきます。この際、作図に不要な線と必要な線を見極めることが重要となります。必要な線をillustratorのペンツールを使って正確に拾うことで、素早く描くことが可能です。
なぞって出来た図面が、図の(a)となります。これは近くから撮影した写真から起した図のため、かなりパース(遠近感)がかかっています。そのため、遠近感のない等角投影図とは見た目が異なります。意匠図面(特に、三面図を省略する場合の斜視図)では、パースのない等角投影図法や斜投影図法での作図が求められますが、特許図面や実用新案の場合は、このようなトレースによる作図でも、構造物の線が明瞭であれば、見栄えのよい、分かり易い図であります。なお、図の(a)では、上から嵌まる蓋が透明なため、蓋に透明性を表す模様をつけたり、中のティーなどは細線を使って透けた感じを出しています。
さらに、蓋を外した分解斜視図を描いたものが図の(b)です。中のティーなどが露出するため、少し丁寧に各部材を描いてみました。符号をつけると、グッと特許図面らしくなり、図面に命が吹き込まれた感じです(おおげさですが、符号入れは大好きです)。
以上、写真をそのままトレースする作図例をご紹介させて頂きました。
ご参考になれば、幸いです。
なお、illustratorにおいて多用するペンツールは慣れるのに少し時間がかかりますが、最近の Illustrator(例えば、 CC 2018)では、以前よりもかなり描き易くなり、その分作業が楽になった気がします。