文字のアウトライン化と、その図面例

主に使用している作図用ソフト「Adobe illustrator」では、文字のアウトライン化を行うことにより、文字の輪郭のパスデータを作ることができます。今回は、このパスデータを使って、樹脂の成形品に文字を形成した図面の例をご紹介します。なお、以下の図は、成形品において文字を凸状に形成した場合の例です。

図(a)は、文字(この例では、「O.D」)を入力した後、「パスのアウトラン」を行い、さらに塗りを「無し(×)」にして得られた、線のみからなる単なる文字の絵です。参考までに、illustrator上ではアウトラン化すると、文字の輪郭にパスやアンカーが点で表示されます。

図(b)及び(c)は、成形品の外側の面を形成する金型の一部を示しています。金型では、文字が成形品に対して左右反転した形状になるため、図(b)では、illustratorの「リフレクト」を使って、文字を反転させています。図(c)では、図(b)の文字のパス等の左右方向の位置を確認しながら、金型の、文字に相当する部分に、凹みを描くようにします。

図(d)は、成形品の素材(樹脂製のシートなど)を金型に押し付ける前の状態を示した図。(e)は、金型の成形面に素材が押し付けられ、金型の凹みに沿って凸部が形成される様子を示す図。(f)は、出来上がった成形品を取り出した状態を示す図、です。このようにして、凸状の「O.D」の文字(の断面ですが)が形成されていく様子を図面化することができます。なお、これら図(d)~(f)のような図面は、文字の他、点字等の各種刻印を作る図としても利用できます。

さらに、上記図(a)を使って、凸状の文字の斜視図を作ることも可能です。下図は、図(a)の描線を適宜変形させて立体図を起こし、その立体図を、前回ご紹介した「ゴルフのティー&マーカーセット」のカバーの上面に描き加えてみた特許図面のサンプルです。

以上、アウトライン化した文字を使って、樹脂の成形品の表面に凸状の文字を形成する説明図や、使用例としての斜視図のご紹介でした。今後もillustratorを使った作図例をご紹介したいと思います。ご参考になれば幸いです。

最後に、今回ご紹介した図面の中で、作図上、肝となる図は、「図(a)」(単なる文字)です。その理由は、もし図(a)を間違えた或いは変更した場合、それ以降の全ての図を修正しなければならないからです。一見、簡単な図(a)ですが、一番慎重に作らないといけない「大事な図」なのです。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。