パースペクティブ(透視投影)は、遠近感をつけて物を立体的に表現する図法で、実際の見た目や、近くで撮影した写真に近いものです。視点が投影面から有限な距離にあるため、投影線は、すべて視点という1点に集中します。
一方、平行投影は、視点が投影面から無限遠にあると仮定した図法で、この平行投影では、投影線が互いに平行になるため遠近が考慮されず、遠くにある部分ほど実際の見た目より大きく描かれる特徴があります。軸測図(等角投影図や二角投影図等)や斜投影図(キャビネット図やカバリエ図)は、平行投影に属します。
図1は、乾電池の3Dモデルを適当な角度で斜め上方から見たCGで、左がパースペクティブモードで表現されたCG、右が平行投影(正投影モード。結果的に二等角投影)で表現されたCGです。左のパースペクティブでは、視点から遠い電池下部ほど小さく見えています。これに対し、右の平行投影では、遠近が考慮されないので、乾電池が上から下まで同じ太さで表現されています。
参考までに、これらを白黒の図で表現してみます。
図2は、図1の3DCGを基に作図した白黒線図です。
パースペクティブと平行投影。どちらの方が自然に見えるかは、見る人の感性や好み、経験などにより個人差が大きいと思われますし、また、どのように見えるかは、図の種類(3DCGか白黒線図かなど)によっても変わってくるのではないでしょうか。
形状や寸法の正確性が重視されるなど、観点やルールによっては、平行投影による図(意匠図面でお馴染みの等角投影図やキャビネット図等)が要求されます。例えば、この乾電池のような形状の場合、パースペクティブでは、単に遠近によって下部が細く見えているだけなのか、又は、下方に行くに従って本当に細くなっているのか、の区別が簡単につきません。この点、平行投影では、一見して太さが均一であることを容易に確認できます。逆に、パースペクティブでないと、イメージが湧かなかったり表現できない分野や景色もあります。
ちなみに、当方では、斜視図の作成に際し、お客さまのご意向が、パースのかかった写真のままでもよいし、その写真を基に描いた平行投影(等角投影図など)でもよい、要は技術の要部が分かる図であればよい、というお話もよく頂きます。このような場合、できるだけ後々の事を考え、分解斜視図が追加になる可能性や、作図のスピード、作図代、修正のし易さについてお聞きしたりお伝えしながら、どのように作図するのが一番良いかを、お客さまと相談するようにしています。
以上、簡単ではありますが、パースペクティブと平行投影で表現された図面のご紹介でした。ご参考になれば幸いです。最後までお読み下さり、ありがとうございました。
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